講師紹介

私と書

---加藤有鄰---    

私が18歳から書を本格的に初めて、驚いたことがあります。書はきれいな字ばかりがすべてではないということです。書の線にはエネルギーがあり、感情を移入し、伝えることが出来る芸術なのだと。師、金子卓義先生は最初、北魏の力強い楷書を見せ、手本とされました。次に流麗な行書、リズミカルな木簡、謹厳な隷書と筆から生み出される多様な古典の表現の魅力に入り込んでしまいました。正に温故知新、古典を臨書することは最も新しい書道芸術を生み出すことができるのです。

大学2年に始めて毎日展近代詩文書部に出品しました。横60cm縦240cmの大きな紙に文字を書くのです。6畳間ぎりぎりにやっと紙を広げることができました。「瞑想の中に沈む太陽」ということばを書きましたが、一番つらかったのはこう表現したいと望む線が思うように出ないことでした。途中、紙と墨にばかりに費用がかさみ、米が買えなくなってしまいました。自分自身はじめて必死に取り組んだ、人生と書との関わりでした。書は書くときのリズムが形を作り、そこに感情を織り込み生み出して行くものと考えます。

書線の鍛錬を行うことにより、その後は様々な表現が可能となり、楽しくも辛くもある充実した活動を続けて今日に至っております。大字漢字書と詩文書作品を得意として毎日展、創玄展、日本詩文書作家協会展等に発表を続けております。



講師のプロフィール

加 藤 有 鄰(かとうゆうりん) 本名 加藤慎(かとうしん)

加藤有鄰 本名 加藤慎(かとうしん)
1955年 北海道芦別に加藤秋霜の二男として生まれる。小学校入学と同時に札幌に転居。
1974年 大東文化大学中国文学科入学、金子卓義の指導を受け生涯の師とする。
1980年 卒業後札幌に戻り書峰社書道に就職するが、書技向上ため再び上京する。
1981年 金子鷗亭先生の指導を受ける。
1984年 日展初入選
1986年 創玄展大賞受賞
1990年 創玄展東京都知事賞受賞
1991年 毎日書道展会員賞受賞
2007年 創玄展文部科学大臣賞受賞
2010年 公益社団法人創玄書道会理事就任
2013年 「SHO2」パリ展出品。(フランスギメ東洋美術館)
2014.5年 「さいたま30人展」出品。(さいたま会館)
2015年 「TOKYO 書 2015」出品。(東京都美術館)

加藤有鄰-Tokyo書
「TOKYO 書 2015」(4.7m×3.6m)

現在

毎日書道展審査会員
創玄展一科審査会員
日展会友
公益社団法人創玄書道会常務理事
日本詩文書作家協会常任理事
全日本書道連盟正会員
高校中学"国語・書道"教員免許有
玄徳書会主宰